元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

香港が大好きな私が香港デモに反対する理由

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大事なのは明日ではなくその先の未来。

 

終わらない香港デモ


いわゆる「逃亡犯条例」の改正案への反対に端を発した「香港デモ」ですが、既に半年以上続いています。


2019年、令和元年も残り2週間あまりということで、年内に収束することはまずあり得ないでしょう。中華圏の人々にとって一年で最も重要なイベントと言えばやはり「旧正月」なわけですが、2020年の旧正月は例年よりも少し早めで1月の中旬頃から長期休暇に入る人が多いため、何らかの動きがあるとしてもそれは3月以降になる可能性が高い気がします。


デモの更なる長期化に大きく影響する可能性があるのは、来年にはアメリカの大統領選挙が控えているという事実です。(その前に台湾の総統選挙もありますが、これはもう蔡英文氏勝利で間違いないでしょうし、香港情勢に与える影響は軽微です。)
アメリカは現在中国と世界の覇権争いを繰り広げているわけで、トランプ氏としては貿易戦争でもっともっと中国を叩きたいわけですが、お互いに追加関税を課し合い続けてしまうとアメリカ国内にも大きなダメージが及ぶため、政敵を作りやすい状況が生じてしまいます。ですから、とりあえず各種譲歩の上、通商交渉の第一段階は「合意」という形にしておいて、再選後に戦争を再開しようと考えているわけです。中国側にとっても、やはり香港絡みの難しい状況が現在生じていますから、このタイミングで民主主義を代表するアメリカとあまり激しい争いはしたくないわけです。


そんなわけで、来年以降も様々な動きがあるでしょう。どう決着がつくのか私には全く予想ができません。時間の経過と共にデモに参加する人たちは減ってはきているようですから、個人的にはこのまま自然消滅し、デモ隊の主な構成員である若者たちには学校で十分に学び社会的地位を獲得し発言力を得ることにまずは専念して欲しいなと思っていますが、グレタさんの影響も大きいのか、「社会運動のために学校を休む」ということが美徳とされているきらいがありますから、どうなるかはわかりません。


私は香港が大好きで過去には何度も訪れているのですが、再訪できる日は一体いつになるのやら、、、

 

私が香港デモに反対する理由


タイトルからわかる通り、私は香港デモには断固反対です。
その理由は、「明らかにのめない要求を香港政府に突きつけているから」。


周庭さんの表現をそのまま用いると、香港政府に対する「香港デモ隊の5つの要求」は以下の通りです。

 

  1. 改正案の完全撤回
  2. 警察と政府の、市民活動を「暴動」とする見解の撤回
  3. デモ参加者の逮捕、起訴の中止
  4. 警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施
  5. 林鄭月娥の辞任と民主的選挙の実現

 


特に3番なんかはまるでテロリストの要求みたいですが、まあそれは置いておくとして、個人的にどうにもこうにも受け入れ難いのは5番の「民主的選挙の実現」です。要は、香港政府のトップである「中華人民共和国香港特別行政区行政長官」を「普通選挙」で選べるようにすることを要求しているのです。


断言しておきますが、この行政長官ポストに関して普通選挙の実施を中国政府が認めることは絶対にあり得ません。


言うまでもなく、1997年に香港はイギリスから中国に「返還」されました。この際、中国政府は鄧小平が提唱した「一国二制度」の考えに基づき、以後50年間(2047年まで)は社会主義政策を実施しないことを約束しました。


何が重要かと言えばそれはもちろん、あと30年もしないうちに香港の政治システムは社会主義に完全に切り替わるという事実です。これはもう国際的に承認されたルールですから、これをひっくり返すことは絶対にできません。


中国政府もこのルールをしっかりと守っており、行政長官は指名するけれどいわゆる「高度な自治」は保証しますよと言っているわけです。


ただやはり、期日になったからと言っていきなり社会主義化などできるわけがないのは明らかですから、少しずつ大陸の影響力を強めていこうと中国政府は各種政策を進めてきたわけです。そういう意味でも、50年という時間が確保されたのです。半世紀もあれば世代も変わりますから、スムーズな移行には適当な時間と言えます。


今回デモ隊は「普通選挙の実施」という要求を突きつけているわけですが、要は独立したい、「香港を独立国家にしたい」ということなのです。そう露骨に言ってしまうとさすがに世論を味方につけるのも難しくなりますから、言い方を変えているだけです。


仮にそんな要求を受け入れてしまったら、2047年以降、再び大規模なデモ、もしくは今度は本格的な独立戦争が起こることになるでしょう。その際には中国政府としても堂々と人民解放軍を出すことができます。そんなシナリオ、一体誰が望むでしょうか?


香港デモに参加している若者たちは皆「自分たちは中国人ではない」と言っています。まさしく「香港独立」こそが彼らの真のモチベーションなのです。


最近、識者の中にも「外国人が意見すべき問題ではなく、内政干渉は避けるべき」といった意見を出す人が増えてきました。教養のある者は皆わかっているのです。「その条件はさすがにのめない」ということを。


今朝、デモに参加している28歳の女性の話がヤフーニュースに出ていました。彼女の婚約者は警察官だそうで、友人たちから結婚を反対されているのだとか。ローカル社会にはデモ絡みで様々な歪みが生じつつあるようです。


ということで、私が香港デモに反対する理由、それは「明らかにのめない要求を香港政府に突きつけているから」、更には、「続けても誰もハッピーにはならないことが明らかだから」です。

 

中国における「自由」


よく「中国には自由がない」なんて言う人がいますが、それを聞いて中国人たちは皆笑っています。


私は現在北京でこれを書いていますが、はっきり言って、北京での生活は東京での生活とほとんど変わりません。普通に仕事をして、毎月決まった日に給料が振り込まれ、食べたいものを食べ、欲しいものを買い、好きな場所に旅行をしています。週末にはたまにクラブに遊びに行ったりもしています。新進気鋭のDJの演奏を聴きながら酒飲んでタバコ吸って、ナンパがうまくいけばベッドの上で国際交流、、、


あと他に何が必要なんでしたっけ?


私はそういう堕落した人間ですが、同僚たちはもっとはるかに真面目です。中国には日本とは違って副業を禁止するルールがないようで、平日の夜や週末に副業で稼いでいる連中もたくさんいます。あくまで政治が社会主義なだけで、経済はアメリカと同じ資本主義ですから、とにかくお金が全てな社会なのです。がっつり稼いでいい車買っていい家に住み、可愛い女の子と暮らす、そういう欲望にまみれな社会、東京と何も変わりません。


同僚たちを見ていて思うわけですが、皆政治には一切関心がありません。皆言っています、「政治なんていうのはつまらない堅物がやるもの」と。社会主義だろうと民主主義だろうと、政治思想なんていかに取るに足らないものか。人間の欲望の底知れぬえげつなさに比べれば、個人的には正直どっちでもいいとすら思えてきます。もっとも、仮に経済が社会主義や共産主義だったら話は別ですけれどね。中国政府は個人の富には一切干渉しませんから、それによって十分かつ最大の「自由」が確保されているのです。

 

もったいない!!!


私がデモに参加している若者たちを見ていて顔をしかめざるを得ない理由はこれです。


「もったいない!!!」


我々大人がいくらお金を積んでも決して手に入れることのできないとてつもなく貴重な「若い頃の時間」を浪費しているわけですから。


私がなぜ「自由」を手に入れることができたか?
それは簡単です。若い頃に一生懸命勉強して高い学歴を身につけ、英語も頑張って勉強して言語の壁を自ら取り去り、更には、国際社会で必死に戦ってグローバルなレベルでの社会的地位を手に入れたからです。


このブログの読者は少ないわけですが、私が素性を明かせばもっと多くの人に私の声を聞いてもらえる自信はあります。


香港の若者たちに言いたいです。
「大学の授業はサボるな。デモどころか、SNSやる時間も惜しんで勉強しろ。学歴は高ければ高いほどいい。本当に政治にモノを言いたいなら、法学や経済学の分野でPh.D.を取れ。社会人になってからもドチャクソに頑張れ。偉くなれ。そして、その時点でまだ本当に香港独立なんてものに拘るのなら行動を起こせばいい。俺みたいな階層の人間だってその時にはあなたの声に耳を傾けるだろう。中国政府のお偉いさん達だって皆死ぬほど勉強して偉くなった。まずは同等もしくはそれ以上の努力をしよう。威勢がいいだけで何のバックグラウンドもない若者の言葉など上には決して届かないし、それが社会の安定に繋がっているのが現実。」


昔は簡単に国を跨ぐ住居の移動などできませんでしたから、「その土地で戦う」ということが重要だったわけです。ただ、もうそういう時代ではないのです。私たちはいつでもどこにでも行けるのですから。私の知り合いの台湾人は、「台湾には未来がない」と言ってアメリカに移住しました。香港の人たちも、そこに自由がないなどと本当に思うのであればどこか他の国に移れば良いのです。若いうちなら簡単に留学ができます。好きな国を選んで現地で学び、現地で生活の基盤を築けばよいだけの話なのです。留学するお金がないと言うのなら、まずは今いる場所で必死に学び必死に働いて富を築くことに全精力を注ぐべきでしょう。自由は努力によって手に入れるものです。現代の世では、学校サボってデモに参加することを努力とは呼びません。


「私たちは命を賭けてデモをしている」と若い女の子がインタビューで言っていました。


簡単に口にするなよ、「命を賭ける」なんて。


若者の命なんてのはあまりにも重い。


それと同時に、バックグラウンド、すなわち努力の軌跡を提示できない若者の言葉など羽のように軽い。


いったん冷静になって欲しい。

 

心配しなくても大丈夫。


香港にいるあなたはもうとっくに自由だし、50年後だって間違いなく自由なのだから。