元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

(コメント紹介)台湾新幹線(高鐡)の経営難問題に関連して興味深いコメントをいただきました

台湾新幹線(高鐡)


10月3日に投稿した台湾新幹線(高鐡)についての以下の記事に関して、非常に興味深いコメントをいただきましたので、こちらでご紹介したいと思います。

 

taiwanlover.hatenablog.com

 

今回いただいたコメント


この度、tw_dot_comさんより以下のようなコメントをいただきました。

当方少々仕事で台湾新幹線建設にも関わったこともあり、また新幹線開業前と後を知る在台日本人として下記補足。

1.チケット代が高い:
台北と高雄間は昔から移動需要が高く、新幹線開業前は今はなき台北松山-高雄小港間の国内航空便が速達手段として非常に過密でした。飛行機がお好きとのことですがこれはJALやANAが羽田伊丹間用でBOWINGに747「SR」を特注したのと事情が近いです。私も南部日帰り(or1泊)出張ではもっぱら国内線の飛行機利用してました。
http://taipeiroc.blog2.fc2.com/blog-entry-15.html

おそらく台湾新幹線計画時点での想定ライバルがこの国内線だったのが今の赤字の根源でしょう。いくら過密ダイヤで満席続きでも国内線の飛行機はMD90や757、A321クラスで満席でもせいぜい新幹線3両分くらいのキャパですから国内線の需要を全部食ったとしても通常は2~3割しか席が埋まらないのもうなずけます。

この国内線料金(片道約1時間)が北高(台北―高雄)で片道約2000元。国鉄自強號(片道約5時間)が約900元だったので新幹線普通車はその中間をとって台北―左営(1時間半)1490元となったわけで「北高国内線全盛時代」を知るものとしては開業当時は「往復で1000元安くなった」と感じたものです。

2.駅へのアクセスが不便:
確かにこれは大きいです。政治家による「我田引鉄」や土地開発利権と土地収用問題、国鉄との不仲などでどうしても辺鄙な場所に作らざるを得なかった部分もあります。また高雄駅付近は土壌が砂質で地下化すると時間とコストがかかりすぎるのと土地収用の困難さのため高雄駅乗り入れはあきらめ少々手前の左営車両基地用地に「仮駅」を設置しました。

 
台湾新幹線の建設に関わった方からのコメントということで、私も非常に興味深く読ませていただきました。特に運賃設定の背景に関してなど、私も全く知りませんでした。

tw_dot_comさん、貴重なコメント、本当にありがとうございました。

 

どうしたら利用者は増えるのか?


台湾新幹線は現在動いていますから、過去の経緯や現状を知った上で、今我々が考えなければならないのは、「どうしたら利用者が増え、経営が上向くのか」です。

実際に利用する側の心情を考えると、「新幹線の駅へのアクセスの不便さ」が結構大きいと思うのですが、こればかりはもう完成してしまっている以上、どうしようもないんですよね。もっとも、だからこそ、この手の「後からでは手がつけられない」部分には計画段階で細心の注意を払う必要があるわけですが。

ということで、個人的に思いつくこととしては、やはり「景気改善」、及びそれに付随した「給与水準の引き上げ」しか方法がないような気がするのです。要は、もうちょっと気軽に新幹線を利用できればいいわけです。台湾最大の都市である台北であっても、まだまだ月給3万元台(約10〜13万円)で働いている人が山ほどいます。20代の若者であれば、2万元台でも極めて普通です。それにも関わらず、スタバの商品価格は日本にある店舗と同じだし、ラーメンは1杯200元(約660円)です。私がいつも書いている通り、1食100元(約330円)で済ましている人は私も含めすごく多いけれど、それでも、「たまにはちょっといいもの食べたいな」とか、「そろそろスマホを新調したいな」とか、「次の連休には旅行に行きたいな」なんてみんな思うわけです。さらには、「一人暮らしするためにお金貯めなきゃ」とか「結婚に向けて少しでも貯金を」とか「子供の養育費の準備をしなきゃ」なんていう心配もしなければならないわけです。

当ブログを訪れる方の多くは、台湾を訪れたことのある人たちだと思いますが、あなたは物価についてどう感じましたか?
「安い」と感じましたか?
例えば、あなたが30代の会社員だとして、台北で月12万円(手取り約11万円)の給料でやっていけると思いますか?
もちろん食ってはいけますが、家庭を持つ余裕があると思いますか?

ということで、こっちに住んでいると、台湾新幹線の運賃はやっぱり高く感じます。
(※これは後日別の記事にする予定ですが、台鐡の自強號ですら現地住民にとっては高いのか、指定席券を買わずに鈍行の料金だけで乗っている人が実際にはすごく多かったりします。)

兎にも角にも、台湾では、給料水準だけがただただ低いんです。

とりあえず、台北に関して言ったら、給与水準は現在の2倍くらいが適切なのではないでしょうか。それでもまだ東京よりは明らかに低いかと思いますが、「給料が2倍になったら結婚する」とか「給料が2倍になるなら子供を作る」なんて人はかなり多いような気がします。私自身に関して言えば、「給料が2倍になるのなら、一生台湾で暮らしてもいい」と思っています。

台湾新幹線の話題から始まって、給与水準の話にだいぶ偏ってきてしまいましたが、今回いろいろと考える中で、やっぱり政府の経済政策って本当にめちゃくちゃ重要なんだな、とごくあたりまえのことを再認識しました。経済政策は、社会インフラから個人の人生設計まで、本当に社会全体を巻き込みますからね。