元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

選挙に興味がない人でも本当に「投票に行くべき」なのか?

f:id:superflyer2015:20211030194602j:plain

 

衆議院議員選挙直前ということで、どのメディアも「選挙には絶対に行こう!」と訴えていますし、行かない人を非難するかのような発言をしている著名人もいます。

私は長年ずっとこのことに違和感を感じ続けてきたので、今回は自分が思うところを少し書いてみたいと思います。

 

きっかけ


衆院選直前ということで、各種メディアは「投票に行こう!」と訴えていますし、俳優や女優等の著名人を起用した投票を促すプロモーション動画も連日放送されています。投票に行くことの重要性を訴える若者グループの活動がメディアに紹介されているのもよく目にします。

 

そういった発信の中で、出演者に「もう誰に投票するか決まっていますか?」なんて聞くシーンがよくあるわけですが、「まだ決まっていない」と答える人がすごく多いことに私は驚きました。そんな程度の関心しかないのに「投票しましょう!」なんて言っていたのだなと。

 

学生団体なんかも全く同じです。昨日舞台裏を撮影した映像をたまたま目にしたのですが、大学生同士の会話の中で、「もうどこに投票するか決めた?」、「いや、まだ。正直どこに投票すればいいのかわからないんだよね...」といったやり取りがあり、こりゃマズいと思って今回久しぶりにブログ記事を書くことにしたのです。

 

理念なき投票は害悪


結論から書きますが、私から言いたいのはただ一つ、「推したい政治家や政党がないのなら投票するな!」です。

 

投票を勧めている人たちがそれが必要な理由として挙げているのが「1票の重み」や「大人の責任」ですから、順番に見ていきましょう。

 

まず「1票の重み」についてですが、1票には数百万円の価値があるなんて言われている通り、ものすごく「重い」のです。

 

今回の衆院選に際して各党が発表した政策を見比べてみれば分かるわけですが、かなり大きく異なります。あくまで一例ですが、「新型コロナ対策」に関して、自民党はウィズコロナ政策、すなわち新型コロナの感染者をゼロにすることは目指さず、上手いこと付き合いながら社会の正常化を目指すべきだと言っています。一方、立憲民主党は全入国者に対して最低でも10日間の隔離を課すと言っています。

 

どちらを支持するかはもちろん各々の考え次第ですが、一つだけ確かなこととして、10日間の隔離なんか課されたら、普通の人は今後絶対に海外旅行には行けなくなります。現在特に欧米には、新型コロナワクチンを接種済みであることを条件に入国後の隔離を免除している国がたくさんあります。世界は社会の正常化へとぐんぐん進んでいっているのです。ANAが1,000億円の赤字見通しと従業員数を20%強削減する旨発表したばかりですが、国を跨ぐ移動ができない状態が長引くと、このように航空会社はもちろんのこと、旅行業界全体への甚大なダメージがダラダラと続くことになるのです。日本は天然資源のない国であり、近年は観光立国化を目指し旅行業界が頑張っていたわけです。そんな中発生したコロナ禍ですが、いわゆる先進国と呼ばれるような国々は既に国境を開いています。レイオフ(一時解雇)したCAさんたちを呼び戻している航空会社もたくさんあります。旅行業界への影響に限れば、コロナ禍はもう国によってはほぼ終わっていると言っても過言ではないのです。

 

そんな中、世界の流れに大きく逆行し、入国者への10日間にも渡る強制隔離を課すと言っている政党があるわけです。

 

しかしながら、「旅行業界のことなんかどうでもいいからゼロコロナを目指して欲しい!」という意見の方ももちろんいるかと思います。ですから、あくまで判断は各々がすれば良いのです。

 

何が言いたいかと言うと、皆さんの1票には、この政策を現実のものにする力もあるし、逆に潰す力もあるということです。1票の重みというのは尋常ではないのです。「支持政党なし」という人が日本には30%以上いるわけで、そういった人たちがまとまって動けばどの政党を与党にすることも可能です。

 

ですから、逆に言えば、各党の公約や政策、基本的な理念に関して十分に理解していない状態で適当に投票してしまうと、「社会が悪くなる」可能性や「誰かを間接的に苦しめる」ことになる可能性があるのです。そのくらい投票というのは重い行為であるということを理解しておく必要があります。

 

もっと言えば、投票するということはある意味、誰かを助け、誰かを助けないということなのです。

 

次に「大人の責任」についてですが、これは上述のことと密接に関係しています。要は、十分に政策の中身や社会への影響を理解した上での投票なら良いのですが、そうでない場合は責任を果たすどころか、むしろ「無責任」ないし「社会にとって害となる」行動になってしまうということです。

 

理想を言えば、「国民全員が政治に関心を持ち、しっかり勉強した上で投票率100%を実現」ということになります。でもそんなあまりにも現実からかけ離れたことを言っても意味なんてありませんよね。

 

なので私は普段、こう周囲の人たちに言っています。

「しっかり勉強して各党の政策を十分に理解した上で投票に行くべき。その候補者や政党を選んだ理由を自信を持って語れないのなら投票しない方が社会のためになる。」

そのくらい、1票を投じるというのは重いことであり、責任を問われる行為なのです。

 

「所得を上げる」方法


言いたい事は既に大体書いたのですが、今回の衆院選でちょっと面白いなと思ったことがあるので触れておきます。

 

今回の選挙では、やたらと国民の「平均収入」が話題になっています。他の先進国に比べ、日本人の給料は近年全然上がっていないどころかむしろ下がっている、という話です。

 

そこでどの党の党首も「皆さんの所得を上げます!」と言っているわけですが、こういう発言を耳にして一体皆さんはどう思うのでしょうか?

 

私の頭に浮かぶのはやはり、「いいね! で、どうやって実現するの?」です。

 

日本人の多くは民間企業で働いているわけですが、そもそも民間企業において給料の額を決めているのは経営者ですから、政府や国会議員がコントロールできるようなものではありません。

 

「最低賃金を1,500円に引き上げます!」なんて言っている党首もいますが、そんなことをしたらフリーターの多くは解雇されるでしょうし、バイトができなくなり大学生の貧困も進むでしょうね。十分なインフレが達成できていないどころか現在デフレなわけで、そんな中で最低賃金の大幅な引き上げなどできるはずがないのです。

 

「10万円を給付します!」なんて言っている党首もいますが、10万円って、日本人の平均年収の40分の1くらいですよね。そんな少額を単発でもらったところで生活が楽になるはずがないのです。

 

我々一般庶民が真に望んでいるのは、「毎月の可処分所得が数万円上がること」なのではないでしょうか。

 

想像してみてください。控え目に言って、もし毎月の手取りが2万円アップしたら、すごく嬉しくないですか? 冗談抜きに、ちょっと人生が変わると思います。

 

そのまま貯金すれば1年で24万円も貯まりますから、半年ごとにiPhoneが買えてしまいますね。現状、美容にお金をかける余裕がないという方であれば、このお金で毎月まともなヘアサロンで髪を綺麗にしてもらうのも良いかと思います。私は学生時代、茶髪にした途端に彼女ができましたから、そういう副次的な効果も望めるかもしれません。夫婦であれば二人分ということで毎月4万円可処分所得が増えることになりますから、もしかしたら、「もう一人産めるかも...」なんて話にもなるかもしれません。少子化問題の解決にも繋がる可能性が高いわけです。

 

そんなわけで、国民全体の可処分所得を何とか増やすことにはものすごく大きな意味があります。

 

問題はもちろん実現方法です。よく議論されている「富裕層への増税」はもちろんやるべきだと思いますが、毎月の所得を一人当たり2万円増やそうとしたらこれはもう百兆円単位の話になりますから、それだけでは全然足りません。

 

ですから結局のところ、「経済成長」意外に日本人の所得を上げる方法など存在しないのです。

 

私だったら...


では社会や経済をどうやって良くするかですが、私がもし内閣総理大臣だったら...という仮定で少しだけ書いてみたいと思います。

 

まず上にも書きましたが富裕層への増税はやります。年収が1億円を超えた辺りからは実質的な税率は下がってしまっているのが現状ですから、そこの是正は必要です。

 

金融所得に対する課税強化に関しては、NISA枠を拡大した上でそこから出た分に関しては20%から30%に引き上げます。税収を増やしつつ、これにより一般庶民のほとんどは免税での投資ができるようになるはずです。

 

少子化対策(子育て支援)に関しては、児童手当の増額(例えば、一人あたり月3万円に引き上げ18歳まで給付)が最も効果的なのですが、これの実現には数十兆円規模の財源が必要になります。ですから、とりあえずは月5千円程度の増額が限界かなと思っています。

 

新型コロナ対策に関しては、もう既に希望者は皆ワクチン接種を終えたわけですから、密になる場所でのマスク着用の「推奨」のみ残して他の制限は全て解除します。また感染者は今後は基本的に町医者に面倒を見てもらうことにします。Go Toキャンペーンは今となっては税金の無駄遣いでしかない(そんなことをしなくても皆旅行に行くから)ので完全に中止にします。入国制限については基本的には撤廃し誰でも条件を満たせば入国できるようにしますが、当面の間は外国人に関しては国を問わずビザとワクチン接種を入国の条件とします。これによりインバウンド需要の回復、それによる税収の増加が期待できます。

 

「中長期的な経済戦略」に関しては、ここには最も重要なことだけ書いておきますが、IT人材の育成に十分な予算を割きます。アメリカを見れば分かる通り、GAFAもテスラも要は全てIT企業ですから、この分野が今後も経済成長の鍵になることは間違いありません。大学や大学院の関連する学部や研究科に補助金を出すと共に、この領域を学ぶ学生たちに奨学金を給付します。さらに学生のうちからIT関連ビジネスを始めやすい土壌を整えたい(大学内にレンタルオフィス設備を作るなど)と思います。

 

また、中学校から投資教育を始め、資産形成及びその管理に関して自ら責任を持ち、公的支援に極力頼らず生きることができるよう教育します。

 

ダイバーシティ関係は、選択的夫婦別姓と同性婚を認めます。

 

最後に、これは特に強調しておきたいことですが、国会議員は65歳定年制にします。

 

終わりに


長くなってしまったのでこのくらいにしておきたいと思いますが、兎にも角にも、ぜひ皆さんもっと政治や経済に関心を持ってください。皆さんの生活の質に直結する話ですから。

 

選挙の際には、しっかり公約や政策について理解した上で、十分な「理由」を持って投票しに行くことが何より重要です。

 

正直政治のことはよくわからない、という人は投票は控えましょう。適当に投票することで社会が悪くなったり誰かが苦しんだりする可能性があります。

 

「政治のことはよくわからないけれど、どうしても投票したい!」ということであれば、親でも恩師でも親友でも誰でも良いので、自分が最も信頼できる人に意見を聞き、そこに投票するのが良いのではないでしょうか。

 

兎にも角にも、口で言うだけなら簡単ですからね。やはり財源までしっかり示していないような政党は論外だと思います。短期間で国民の「所得を上げる」なんてことは絶対に不可能です。「経済成長」以外に国民の生活を楽にする方法など存在しないわけで、中長期的なビジョンを示しているか否か、をチェックすることが重要なのではないでしょうか。

 

最後に、今回の選挙の主要政策である「新型コロナ対策」にもう一度だけ触れて終わりにしたいと思います。

 

新型コロナウイルスそのものを完全に駆逐することなど絶対に不可能です。中国や台湾を見れば分かる通り、ゼロコロナを目指したが故に経済が急激に落ち込み大変なことになっています。共生、すなわちウィズコロナ以外の選択肢など絶対に存在しないのです。

 

私も若い頃は「経済」の重要性を理解できませんでしたが、コロナ禍を経験したことで、皆さんも「経済悪化でも人はたくさん死ぬ」ということがよくわかったのではないでしょうか。

 

コロナ禍により日本の自殺者は3千人以上増加し、経済困窮で苦しんでいる人たちが現在もたくさんいます。加齢によって免疫力の低下した高齢者が感染して亡くなるのはただの「寿命」です。そういう観点から見れば、ここ最近国内の新規感染者数は激減したとは言え、私にはまだまだ過度な心配により他者を間接的に苦しめている日本人がたくさんいるように思えてなりません。そして、そういう人たちのマインドを利用しようとしている連中がいるわけです。

 

何でもそうですが、全員を助けることなど不可能です。
誰かを助けるということは、誰かを助けないということ。
誰かを当選させるということは、誰かを落とすということ。

 

このことの重さを噛み締めつつ、ぜひ明日は理念を持って投票所に足を運んでください。