元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

「つまらないものですが」はNG? 敬遠される本当の理由

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つまらない記事ではございますが、ご笑覧いただければと存じます。

 

「つまらないものですが」はNG?


皆さんは、「つまらないものですが」という日本語表現をご存知でしょうか?

 

私は昭和の人間ですから、極めて一般的な表現だと思って生きてきましたが、なんでも、最近の日本ではこの表現は避けられる傾向にあるのだとか。「マナー講師」なる職業(?)の方が書いた記事でこのことを知り驚きました。

 

言うまでもなく、この表現は客先等にギフトを渡す際に謙遜の意を表すための表現です。遜って言っているだけですから、本当につまらない、取るに足らないようなものだと思っているわけではありませんし、受け取る側ももちろんそれを理解しています。しかしながら、最近では以下のような理由から避けるべき表現であると考える人が増えているのだとか。

 

  • つまらないものなら欲しくない。
  • つまらないものをあげようとするなんて失礼。
  • 遜り過ぎ。言われる側としては不快。
  • その商品を作った人に失礼。


これを読み、そんな馬鹿な話があるのかと思ってネット上の情報を漁ってみたのですが、賛否両論色々あるようです。「確かにここまでのレベルの謙遜にはちょっと違和感を感じる」という人がいれば、「言葉狩り」、「それだけ日本に外人が増えたということ」なんていう意見もありました。

 

個人的には、正直どれもしっくりきません。私が思うに、別の理由がある気がするのです。そこで今回は自分なりの考察を少し書いてみようかなと。

 

ちなみに、私は普段日本にいたりいなかったりするのですが、海外で仕事関係の人や友人知人にギフトを渡す際にはこう言っています。
「I hope you like it.」(気に入っていただけるとよいのですが。)
もちろんこれは「つまらないものですが」と意訳しても全く問題ないかと思います。もっと言えば、贈る側と受け取る側の関係や年齢によって訳し分けるべきでしょうね。

 

避けられるようになった本当の理由


この「つまらないものですが」という表現が敬遠されるようになった理由ですが、私は以下のように考えています。

 

  1. マナー講師のターゲットは若者。
  2. 本当に「つまらないもの」であることが増えた。
  3. 日本語が緩い方向にシフトしつつある。


順番に見ていきたいと思いますが、まずはこういった「マナー」に関する発言をしているマナー講師の特徴に起因するものです。連中のターゲットというか「お客さん」は、主に就活生や新入社員といった若者です。ですから、20代前半の若者たちに対してレクチャーしているシーンを想像すればよいわけですが、確かに「つまらないものですが」という表現は現代の若者にはちょっとミスマッチな気がしなくもありません。物心がついた頃にはスマホがあったような世代ですし、昔に比べて悪く言えば「幼い」、よく言えば「非常に若々しい」感じの若者が多いですから、このレベルのフォーマルな表現はイマイチしっくりきませんね。私のようなオジサンが同世代、もしくはもっと上の世代のお客さんの前で使うと非常に様になるわけですが、社会人になりたての現代の若者が使うとちょっとチグハグした感じが出てしまうかもしれません。

 

次に、「本当につまらないものであることが増えた」という話なのですが、個人的にはこれが主要な原因だと思っています。昭和オジサンの感覚では、「つまらないものですが」なんていう表現を使うのは、贈る側にだいぶ余裕のある場合です。わかりやすく言えば、「つまらないもの」どころか「丁寧に選んだ上等なもの」なのです。ほぼ間違いなく「高級品」です。そうでない場合には、私であればとても恐ろしくてそんな表現は使えません。自分が受け手である場合、「つまらないものですが」なんて言われたら、中身を確認する前に「随分と気を遣ってくれたんだな、、、」なんて思うでしょう。これがリアルな現場です。

 

現在でも日本にはギフトを贈る文化が残っていますし、友人知人を訪ねる際にちょっとした手土産を持参することも多いです。ただ、デパートで有名店の商品を購入して、、、なんていう方は昔に比べて減ったと思います。私もそうですが、経済的な余裕のない人が非常に増えました。デパ地下で高級店のお菓子を買えば3千円くらいは当たり前のようにしたりするわけですが、この「3千円」の重みがこの10年くらいで結構大きく変化した気がします。例えば、デパ地下でケーキを買うと1つ700円程度は平気でするわけで、人数分買えばそれなりの金額になります。だからお店のランクを少し落とし、さらに比較的安価なロールケーキで済ませるなんていう方も少なくないのではないでしょうか。もちろんこれはただの一例ですし、相手との関係性にも大きく依存した話でしょう。ただ、こういった部分における変化は結構顕著なのではないかなと私は勝手に想像しています。

 

最後に日本語の変化についても触れておきたいと思います。端的に言えば、現代人が好んで使う日本語は明らかに緩い方法へとシフトしている気がします。老若男女を問わず、誰もが毎日のようにSNSを利用するような時代であり、省略表現が非常に広範に使われているのが現状です。私はTwitterが好きで毎日利用しているのですが、厳しい文字数制限がありますから、利用し続けているうちに可能な限り表現を省略して文字数を抑制する癖がついた気がします。そんなことばかりやっている現代の日本人にとって、「つまらないものですが」などというのはさすがに長ったらしいですね。「短文でサクッと述べる」ことを美とする現代人の感性にはあまり合わないのかなと。私のような中年のオジサンでもそう感じるわけですから、20代前半の若者にとっては尚更でしょう。

 

言語というのは一般的に時代と共に変化するものであり、例えば中国語なんかでも、近年新しい表現がどんどん生まれ、だんだんと変化していっているそうです。ただまあ、言語というのは文化そのものと言っても過言ではないくらい重要なものですからね。「つまらないものですが」なんていうのも、日本的な非常に面白い表現であり、これを「NG」だなどと言って切り捨てるのはナンセンスです。若い方々もきっと、年をとればこういった謙遜表現の「味」というものが理解できるようになるのではないでしょうか。そもそも「マナー講師」の中には結構若い方もいらっしゃるようで、私のようなシニア層から見たら、「こんな若造が偉そうに語っているのか、、、」なんてつい思ってしまったりもするのです。まあもっとも、連中的にはとにかく何か言わないと金にならないということなのかもしれませんが。

 

代替表現


ということで、相手との関係性や自身の年齢、その場の雰囲気などによっては、「つまらないものですが」はちょっと重いな、、、という場合もあるかと思います。そんな場合の代替表現についても考えてみましょう。

 

ネット上の情報を漁って見つけたのは以下のような表現です。

 

  • 「気持ちばかりですが」
  • 「お口に合うかわかりませんが」


これらも極めて一般的な表現ですね。実際に使っているという方も少なくないのではないでしょうか。

 

個人的には、比較的どうでもいい相手に対しては、これら、もしくはやはり「つまらないものですが」を使います。

 

逆に、本気の場合、つまり「義理ではなく、本当に贈りたくて贈る場合」に関しては、ギフトの内容に関して軽く説明することが多いです。例えば、以下のような感じです。

 

私、マリアージュフレールの紅茶のファンでして、ほんの少しだけで申し訳ないのですが、是非試していただきたいなと。こちらはヌワラエリヤです。注ぐタイミングで結構味わいが変わってくるので、自分の好みを見つけるのも楽しいですよ。

 

私、ここのシャンパーニュが大好きなので、是非試していただきたいなと思いまして。ペリエ・ジュエという、ペリエさんと彼の奥さんのジュエさんが作ったメゾンのものです。上品なフレーバーと余韻が素晴らしいんですよ。よく冷やしてお召し上がりください。


これは今適当に考えた一例ですが、実は私には、贈り物をする際のルールがあります。
「自分が本当に気に入ったもの、自分も欲しいと思うものしかあげない。」
毎回このルールに従うようにしています。

 

特に相手が異性の場合、自分では「試せない」なんていうケースもあります。でも、例えばある程度の期間付き合った恋人の場合などであれば、相手の好みなんて自ずと分かるものなんですよね。大昔の話ですが、当時の彼女が何も言っていないのに私の好みにバッチリ合った財布をプレゼントしてくれた際の感動は今でも忘れません。そして、彼女はその時にその財布を選んだ理由について説明してくれたのです。それ以来、私が贈り物をする際にもそれが習慣になりました。

 

とまあ、ギフト一般の話に飛躍してしまいましたが、何が言いたいかと言うと、「マナー」について語るのであれば、「言葉遊び」に終始していても仕方ないということです。例えば、某マナー講師(?)は「美味しいと評判のお菓子なので、、、」なんていう表現を勧めていますが、個人的には微妙だなと。私だったら、「たかがお菓子なのにも関わらず、自分で食ったことすらないようなものを寄越すんじゃねーよ」なんて思うことでしょう。もちろんその場では満面の笑みで受け取りたくさんお礼を述べますし、帰りには可能なら何かお土産を持たせるでしょうが。

 

色んな表現、広範な知識、豊かな経験、そういうのがどれもすごく重要なのだと思います。それに、どんなに素晴らしいギフトを持って行ったとしても、それを渡す当人が「つまらないもの」だったら話になりませんしね。