元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

なぜ多くの台湾人はiPhoneと一眼レフを持つことができるのか?

一眼レフ


つい最近、職場の同僚と台湾人のお金の使い方に関する話をしたのですが、なかなかそれが面白かったので、こちらで紹介してみたいと思います。

 

なぜか多いiPhoneと一眼レフの所有者


だいぶ前に私はこんな記事を書きました。

 

taiwanlover.hatenablog.com


台湾人のお金の使い方は日本人とは結構異なるような気がするのですが、このことが個人的には面白くて、なぜだろうとずっと気になっていました。今回台湾人の同僚から一つの答えを得られたような気がします。

まず、どう異なるのかなのですが、台北で暮らしていると、例えばiPhoneを持っている人が非常に多いことがよくわかります。若者でも普通に持っています。台湾で有名なネット通販サイトで値段を調べてみたところ、iPhone 7の128Gのモデルが当記事執筆時点で26,999元(約98,000円)でした。正直、こっちで普通に暮らしている者にとってはめちゃくちゃ高いです。給与水準で言ったら、日本と台湾では倍くらいの差がありますから、日本人の感覚で言ったら20万円くらいということになります。「あんなものを買う人の気が知れない」と普段思っている私の気持ちがお分かりいただけるのではないでしょうか。

そもそも、「平均給与」なんていうのはたいして参考にならないことが多いです。実際のところ、26,000〜30,000元(約95,000〜110,000円)くらいの月収で働いている人は首都である台北でも非常に多いような気がします。有名大学を出て一流企業で働いている40代でも、50,000元(約182,000円)程度のようです。

iPhone一つ買うのに、月収がまるまる飛ぶとしたら、あなたは買いますか?

私には買えません。ですから、5,000元(約18,000円)くらいの安いやつを使っています。当ブログに載せている写真の多くはそれで撮ったものです。まあ、すごく綺麗ではないけれど、十分だと言えば十分な気もするのですが、いかがでしょうか。

そしてもう一つ、私が普段から気になっているのは一眼レフの所有者の多さです。台湾では、観光地でなくでも、首からゴツいカメラを下げた若者を結構よく見かけます。確実に東京よりも多く見かけるような気がします。

一眼レフの価格というか、主にはレンズの価格なのかもしれませんが、値段は本当にピンからキリまで。ただ、安めのもので揃えたとしても、やはり一般的には非常に高いわけです。情けない話ですが、私には10年後も20年後も買えないだろうなと思います。私だって、ブロガーの端くれですし、写真撮影は好きなので欲しいとは思いますけれど、一生買えないでしょうね。

それでは、いったいなぜ台湾の若者には買えるのでしょうか?

 

管理人の予想


私の予想は、「価値を感じるものにとことんお金を集中させているから」です。首からゴツいカメラを下げている若者をよく見てみると、服も靴もバッグも安物なんてことがよくあります。ですから、節約できるところで徹底的に出費を削って、自分が真に価値を感じるところに全財産を突っ込んでいるのだろう、とまあそう思っていたわけです。

所詮服なんていうのは着ている自分には見えないわけで、あくまで社会的な要素が強い商品な気がします。そういったものになけなしのお金を使うくらいなら、そこをバッサリ切ってしまって、本当に価値のあるものに使いたい。うん、なかなか格好いいお金の使い方だな、なんて思っていました。iPhoneやカメラにお金をかけることを皆さんがどう思われるか私にはわかりませんが、個人的にはアリだなと思います。現代人にとってスマートフォンは無くてはならない存在ですし、エンターテイメント機器というか、おもちゃとしての側面もあります。高いけれど、いったん購入してしまえばある程度長く楽しむことができます。カメラに関して言えば、写真というのは絶対に戻れない過去に我々を誘ってくれる極めて数少ない方法の一つですから、果てしない価値を秘めていると言っても過言ではない気がします。

ということで、私は台湾人の「価値観」こそがこの現象の根底にあるのだろうと考えていたのです。

 

同僚の台湾人の意見


最近、ある同僚の台湾人とこの件について話をする機会がありました。以下、対話形式でご紹介します。

私:「台湾人の価値観というか、お金の使い方って本当に粋だよね!」

同僚:「そんなことはないよ。確かに、デジタル機器が好きな人は多いけれど、そんなのはどこの国でも同じでしょう。みんなお金なんてないんだから、無理して買おうとするのは間違っていると思う。」

私:「だから、そうまでしても買いたいくらい価値を感じているってことなんじゃないの?」

同僚:「違うよ。みんな自暴自棄になっているだけ。」

私:「自暴自棄? どういうこと?」

同僚:「例えば、私たちなんて結局、この国でどんなに頑張ったって絶対に家は買えないんだよ。豊かな生活なんて、絶対に手に入らないってみんなわかってる。みんな強烈なストレスを感じているんだよ。そんな社会で生きていたら、自ずと『今をとことん楽しもう』という結論に至るのは自然なことだと思う。自分も実はお金はかなり積極的に使っていて、貯金なんてほとんどないよ。」

この同僚、アラフォーの独身女性なのですが、この話を聞き、私もいろいろと考え込んでしまいました。

 

「夢のある社会」とは?


本当に難しい話ですよね。まあでも、彼女の言う通り、どんなに頑張って必死でお金を貯めても、台北で家を買うなんていうのは絶対に無理です。1,000万元(約3,600万円)のマンションなんていうのもないわけではないけれど、日本人が見たらびっくりするようなボロい物件だったりします。

この問題に関しては、日本人にとっては想像するのが難しいのではないでしょうか。今の日本なんて空き家だらけ。田舎なんかに行かなくても、神奈川、埼玉、千葉あたりで十分住めるレベルの中古マンションが1,000万円くらいで買えたりします。1,000万円は大金だけれど、台北の状況に比べたら、はるかに現実的な価格ではないでしょうか。

「夢はマイホーム」なんていう時代ではないけれど、私もあなたも人の子であり、我々の親は結婚して子供を作って家庭を築いたわけです。ですから、長年ずっと続いてきた「当たり前のこと」を自分は達成できそうもないという現実は、想像を絶するレベルのストレスになり得るのかもしれません。持ち家じゃなきゃ結婚できないわけではないし、そもそも結婚は個人レベルで考えたら必要なものではありませんが、こんな社会のままで良いのかということですよね。

台湾には、普段笑顔の人が非常に多いです。でも、もしかしたら、案外心の中は複雑だったりするのかもしれません。普段は笑顔の同僚が、少し寂しそうな表情で話してくれたのが印象的でした。