元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

航空会社が実施した「Taiwan」から「Taiwan, China」への表記変更

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最近ANAやJALのホームページで台湾便をチェックされた方、変化に気付きましたか?

2018年は、台中問題における極めて重要な年となりました。

 

「台湾」から「中国台湾省」へ


今年の4月、中国の中国民用航空局(民航局)は航空会社44社に対し、台湾が独立国であるかのような表現を改めるよう通達を出しました。「7月25日までに変更を行わなければ、中国市場へのアクセスを制限する」という脅し文句を添えて。

 

そして民航局は7月26日、「航空会社44社全てが表記変更に応じた」と発表しました。

 

現在、例えばフルサービスキャリアとしては旅客数でヨーロッパ最大の「ルフトハンザドイツ航空」のホームページでは、以下のようが表記がなされています。

 

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元々「Taiwan」(台湾)と表記されていたものが、「Taiwan, China」(中国台湾省)に変更されたのです。

 

英語表記に慣れていない方だとピンとこないかもしれませんが、英語では、住所は日本語とは逆の順番にコンマで区切って表記します。ですから例えば、台北市の中心部、日系デパートの三越などが位置している「台北市信義区」であれば、「Xinyi District, Taipei City, Taiwan」となります。

 

ですから、国レベルの表記を想定した場合、「Taiwan」と書けば、それは台湾が独立した国家であることを意味しますし、「Taiwan, China」と書けば、台湾は中国という独立国家における州、省、県レベルの一地域の名称であるということを意味します。

 

ANAとJALの対応


中国の民航局が通達を出した航空会社44社の中には、日本の航空会社である全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)ももちろん含まれます。

 

ANAもJALも中国にはたくさんの自社運行便を飛ばしていますから、もちろん就航先の政府の意向に従う以外に選択肢はありません。そこで2社は中国と香港向けのサイトのみ「台湾」から「中国台湾」に表記を変更しました。

 

しかしそうしたところ、台湾の外交部(日本の外務省に相当)が2社を名指しして「厳正に抗議する」と言ってきたのです。

 

ANAもJALも民間企業であり、各国政府のルールに従ってビジネスをしているだけなわけですが、政治問題に巻き込まれて完全に板挟み状態になってしまいました。

 

両社は相当悩んだようで、最終的に以下のような対応をすることになりました。
現在ANAのホームページ上ではこのように表記されています。

 

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下の方までスクロールしてみると、「台北」が見つかります。

 

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なお、JALのウェブサイト上の表記は以下の通り。

 

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つまり、中国、台湾、韓国を一括りにして「東アジア」と表記することにしたのです。

 

ただ、上の画像をご覧いただけば分かる通り、ちょっと無理があるというか、利用者サイドからしたら分かりづらいですね。それに、これではまるでソウルや台北が中国に飲み込まれてしまったかのようにも思えます。

 

ANAとJALがこういった表記を最終的に選択したところから判断するに、両社とも本当に心底悩んだのでしょうね。

 

本件のインパクト


皆さんは本件に関して、どう思われますか?

 

「どうせまた中国の嫌がらせでしょ? 形式的な変更に過ぎないわけだから問題ないよ。放っておけばいい。」なんて思いますか?

 

私は本件を知った際には、「うわぁ〜、、、こんなに早くこんなことが起こるなんて、、、」というのが素直な感想でした。

 

日本も台湾も島国ですから、訪れる外国人は全員ほぼ間違いなく航空会社の表記を目にするわけです。私は普段海外にいますし、国際的なプロジェクトにも携わっていますから、様々な国の人たちとコミュニケーションをとる機会があります。しかし、ほとんどの欧米人は台湾がどこにあるのかすら知りません。「中国の都市でしょ」なんて言う人も普通にいます。ですから、今回の表記変更のインパクトはとてつもなく大きいと個人的には考えています。

 

次回の表記変更


さて、「Taiwan」が「Taiwan, China」に変更されたわけですが、これで終わりではありません。いつか、再度表記変更に関する通達が出される日が必ずきます。

 

何を言っているか、わかりますか?

 

そうです。「Taiwan, China」から「China」への変更です。

 

この変更がいつなされるかはわかりません。私が生きているうちにはなされると私は確信していますが、それが3年後なのか、それとも10年後なのか、私にはわかりません。

 

ただ、一つ確実に言えるのは、「Taiwan, China」から「China」への変更など、「Taiwan」から「Taiwan, China」への変更に比べれば些細なものであるということです。

 

終わりに


習近平氏は台湾問題に関してかなり力を入れている、という話を台湾人の知り合いから数ヶ月前に聞いたばかりなのですが、中国は一党独裁資本主義国家ですから、とにかくやることが恐ろしく早いですし、こういったビジネス絡みの話にはめっぽう強いですね。

 

我々は子供の頃、学校で歴史の教科書から「過去」を学んだわけですが、今こうしている間に、教科書の新しいページがどんどん作られていっているのだなと強く実感します。

 

私は常々ブログでもリアルでも言っているわけですが、資本主義というのは怖いですね、本当に。今回の件、通達を出してきたのが国土が狭く人口も少なく経済力も弱い小規模国家であれば、突っ撥ねることだってできたわけです。しかし、ほぼ全ての先進国の経済が中国に強く依存しているのが現状であって、ビジネスの世界では弱者は強者の言い成りです。

 

そういった現状を踏まえれば、我々日本人は「Japan」が今後もずっと「Japan」であり続けるために今何をすべきなのか、どんな未来を作るべきなのか、そういったことも自ずと見えてくるのではないでしょうか。

 

ちなみに、私が中国における日常生活の中でいつも感じているのは「数の力」です。最近以下のような記事も書きました。

 

chinalover.hatenablog.com

 

日本の政治家は学がないのばかりなので(※中国では政治家であっても院卒は当たり前。習近平氏を含め、博士号取得者もたくさんいる。)、女性を「産む機械」と表現したり、「LGBTは生産性がない」などと言ったり、とにかく知的さの欠片もありません。しかしながら、「人口の維持」の重要性は中国に住んでいると強烈に実感します。

 

現在の日本社会を見ていると、課題が山積みであることがわかります。ただ、私のように「日本が大好き。日本のためなら何だってやってやるぜ!」なんて思っている連中は決して少なくありません。

 

実は、現在日本で仕事を探しているのですが、私はとにかく日本や日本人のためになる仕事がしたいです。どんな仕事をしても、納税すれば日本社会に貢献したことにはなるわけですが、もっと直接的に何かがしたくて。少し話が逸れましたが、最近私はそんなことを考えています。