元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

コロナに関してはなぜ専門家(科学者)の予想がことごとく外れるのか?

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上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけー!!!

 

当たらない予想


未だにメディアによる報道は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した話題で持ち切りなわけですが、さすがにコロナの話には飽きてしまった人が多いのか、かつてのような熱量は感じられなくなりました。私の印象では、メディアの言うことにあまり真剣には耳を傾けなくなった人が増えた気がします。


コロナ関連の報道においては、専門家の見解が紹介されたり、ニュース番組ではコメンテーターとして専門家が登場するシーンがよく見られるわけですが、そういった専門家たちの発言力も最近では若干衰えてきている気がします。


その理由は明白で、彼ら彼女らの予想がことごとく外れてきたから、という事実に他なりません。「このままでは◯◯人死ぬ」とか「◯週間後には感染者が◯倍になっている」とか、連中は科学者ですから毎回しっかりと数字を示すわけですが、兎にも角にもその数字があまりにも頓珍漢なもの(これはもちろん後日判明したことですが)で全然当たらないんですよね。


毎回毎回あまりにも予想が大きく外れるから、皆あまり真剣に彼ら彼女らの声を聞こうとはしなくなってしまったわけです。


ただ、予想値が外れるのにもやはり理由があって、それを理解することは決して難しくはありません。あまりこういうことに関してはメディアも専門家も触れてはいないので、今回ちょっと書いてみようかなと思った次第です。

 

予想の仕方


まずは最も代表的な失敗例からご紹介したいと思いますが、そもそも感染者数の予想というのはどうような手順で行うのか、というところから始めたいと思います。


「感染者数の予想」というのは、要は感染状況の「時間発展」を調べるということであり、わかりやすく言えば、任意の時間を代入するとその時点での感染者数が得られるような方程式が必要になります。ただ、これは厳密な理論から導かれるような絶対的なものではありませんから、あくまで科学者の「予想」ということになります。「そんなものが信頼できるのか?」という話になるわけですが、過去に流行した感染症の感染状況の時間発展に合致するように作られていますから、基本的にはそれなりに確からしい、もしくは有用である可能性が高いとは言えるかと思います。人間の複雑な社会活動とも絡んだ複雑系、もしくはカオス的とも言えるような対象を扱っているわけですから、その程度が精精なのです。


実際の感染状況の時間発展シミュレーションの実行のために必要になるのがその方程式に含まれる各種パラメーターの指定なのですが、これが厄介なのです。要は、感染状況の時間発展が仮に

 

(累積感染者数)= a ×(ある時点からの経過時間)+ b


のような一次関数で表現され得るとして、パラメーターである「a」と「b」に何らかの数字を与えてあげないと時間を例えば「2週間(14日)」などと代入したとしても累積感染者数は求まらないわけです。実際の方程式はもっとはるかに複雑でパラメーター数も多いため、このパラメーター次第で結果が非常に大きく変化することになるのです。それで感染拡大の速さが変わるというか、そもそも感染が拡大しているのか収束に向かっているのかといったような全体的な傾向すら変わってしまいます。


なのでこのパラメーターの決定が重要になるわけですが、通常は似た感染症に関する過去のデータで決めたり、感染初期に得られたデータで決めたり、自国よりも早く感染が広がった他国で得られたデータを用いて決めたりします。


感染者数や死者数の予想と言えば、専門家会議のメンバーとして活躍された「8割おじさん」こと北海道大学(2020年8月1日からは京都大学)の西浦博教授がよく知られています。この分野に詳しい方が言うには、この分野でよく知られている模型(ここで言うところの方程式)を使い、ヨーロッパにおける感染爆発で得られたデータで決めたパラメーター群を用いてシミュレーションを実行すると、実際に彼が言ったような大きな数字が出るそうです。要は、パラメーター決めの段階で深刻なミスを犯したということに尽きるのだろうと思われます。とは言え、当初はヨーロッパ人と日本人では自然免疫の強さに違い(BCGワクチンの摂取によるものだと考えられている)があるなんてことは知られていませんでしたから、仕方がなかったのだとも言えます。


ここでお気付きの方もいるとは思いますが、「日本でコロナが蔓延してもうだいぶ経つわけだから、日本国内のデータで今ならしっかりパラメーターを決められるのでは?」という話に当然なるわけです。


ただ、実はこれは不可能なのです。なぜかと言ったら、日本国内で得られているかのように見える「データ」はあまりにも大きな不定性を含んでいるからです。日本で得られているデータなど、科学者的にはデータと呼べるような代物ではないのです。


どういう意味かと言うと、現状誰も日本(もしくは日本の一地域)における本当の「感染者数」を知らないのです。多くの国で実施されたような特定地域における一斉PCR検査を日本では一切やっていませんから、実際にどのくらい感染者がいて、検査数との比がどのような値なのかが一切不明なのです。もっと言えば、日本ではデータ収集自体をそもそも今日まで一切やってはこなかったのです。私は自民党及び安倍晋三首相の支持者ですから(旧民主党政権時代に酷い目に遭ったので)政権批判は基本的にはしたくないのですが、データを取らないということはある意味科学の否定ですから、う〜ん、、、と唸らずにはいられません。


ということで、今日でも専門家(科学者)たちの予想が全然当たらないことの背景には、「予想をするのに必要な日本におけるデータがほぼほぼ存在しない」という事実があるのです。

 

収束するのか?


さて、この辺りでお堅い話はやめましょう。まあもう過去のことは忘れましょう。未知の疫病蔓延ということで、専門家だろうと何だろうとわからないことはたくさんあったわけですから。社会的なバイアスも挙げればきりがありませんしね。


今、我々が知りたいのは「コロナは現在収束に向かっているのか?」、そして「収束するとしたらいつ頃なのか?」という問いへの答えだと思います。


これを知ることは本来ならそう難しいことではありません。指標になるのは「PCR検査陽性数/PCR検査数」です。これはあくまで一例ですが、この比の1週間平均を計算し、さらに前週の値との比をとるのです。この値が数週間に渡って「1」を下回っていれば収束に向かっているという判定になります。


ただ、これはもちろん十分な検査数を前提にしていますから、現状ではこの方法は使えません。理想を言えば、検査数及び検査対象者は固定してしまうのがベストです。例えば、東京都民全員だと大変ですから、特定の区を対象にして全区民に数週間に渡って週1で検査を受けてもらうのです。同じような感じで各都道府県の一部の地域でデータ採取をすれば、非常に有用なデータが得られ全体の傾向をしっかり把握することができるでしょう。


まあでも、あまり現実的ではありませんね。一斉検査をやれば、現在公表されているよりもはるかに多い感染者が見つかることになります。日本人の場合は感染してもほとんどは無症状ないし軽症で済みますから。そういった人たちをむやみやたらに炙り出し、結果的に地域医療にダメージを与えるのが得策でないことなど火を見るよりも明らかです。


ですから、総合的に考えれば、日本政府のやり方は正しかったのだと思います。科学的に言えば「検査をしまくる」のが正しいに決まっているのです。ただ、社会的な影響、日本人の国民性、日本における重症化率の相対的低さなどを考慮すると、これで良かったのだと私は考えています。もっとも、やはり専門家の方々からしたらモヤモヤするのでしょうけれどね。今回データを取っていないせいで、数年後にもっとヤバいウイルスがやって来た時に過去から学ぶことができないわけですから。


そう言えば、グレタ・トゥーンベリさんが「科学の声に耳を傾けましょう」的なことを言っていましたね。近年はメディアも「エビデンス」という表現をよく用いるようになりました。ただ、今回のように人間の実社会と深く絡み合った問題になると、もはや科学はあまりカチッとしたものではなくなってしまうのです。というか、正確に言えば、今皆さんが科学者に求めているものは、実際のところ科学の範疇ではなかったりするのです。だって、国民全員が家に閉じこもって外出しなければ感染拡大などあり得ないわけですから。皆さんが同僚と居酒屋で飲みたい気持ちや恋人に会って濃厚接触したい気持ちというのはなかなか数値化するのが難しいのです。


ということで、コロナは収束に向かっているのか?、もしそうならいつ頃収束するのか?、といったような問いに対する答えを持っている人は現在この世界にはいないはずです。もちろん私にもわかりませんし予想すらできません。というか、本音を書けば、それはもはや皆さんの心の問題だとすら思っています。既に以前のようにごく普通に生活している人たちは日本にもたくさんいるわけで、そういう人たちにとってはこれはもう終わった話なのでしょうし。


とりあえず日本に限れば、収束云々なんてもはやそんなことはどうでもいいでしょう。収束に向かったとしても感染者数ゼロになど絶対になりませんし、仮に万が一なったとしてもきっとまた数年後には最新型のコロナが蔓延します。未知のコロナが既にこの世界に存在していることは科学的にわかっていることですから。我々が理解すべきは、体調管理の重要性です。バランスのとれた食事と十分な睡眠、そして適度な運動、これらが本当に極めて重要なのです。喫煙をする人や肥満な人、75歳以上の健康寿命を過ぎた人たち(日本人の健康寿命は男女共に70代前半)が感染して亡くなったとしても、個人的にはそりゃまあしゃーないわなとしか思いません。某曲に「普通がなんだか気づけよ人間」という有名な歌詞がありますが、まさにそういうことなのではないでしょうか。