元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

あなたの父親は本当にその男性ですか?

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本日、非常にショッキングなニュースを目にしてしまったので、こちらでシェアしたいと思います。

 

不妊治療専門医が自らの精液を使用


この度、このようなタイトルのTIME誌の記事(http://time.com/5227909/ancestry-dna-fertility-biological-father/)を目にしました。

 

「Ancestry.com Revealed This Woman's Father Was Her Family’s Fertility Doctor. Now She's Suing」
(ある女性の父親が不妊治療専門医であったことをAncestry.comが明らかにした。彼女は現在訴訟中である。)

 

以下、記事の内容を時系列に並べ替えて簡単にご紹介します。

 

  1. Howard FowlerとSally Ashbyの間にはなかなか子供ができず、夫婦は1979年にGerald E. Mortimer医師に不妊治療を依頼した。
  2. Mortimer医師は、Fowlerに関して「精液中の精子の数が少なく運動率も低い」と診断、Ashbyに関しては「子宮後屈」と診断した。
  3. Mortimer医師は1980年の6月、7月、8月に渡り、「FowlerのDNAが85%、ドナーのDNAが15%」の混合物により、Ashbyに対して人工授精を試みた。
  4. この際、夫妻は「身長約183センチ以上、茶色の髪に青い瞳の大学生」をドナーの条件として指定した。
  5. 1980年の8月、Ashbyは妊娠した。
  6. 2017年の7月、夫妻の娘であるKelli RowletteはAncestry.comという会社に依頼した調査により、自分の生物学的な父親がMortimer医師である事を知った。しかしこの時点では、彼女はこの人物が誰なのかわからなかった。
  7. Rowletteは「検査結果の間違いだよ」と説得され、この事を母親のAshbyに伝えた。
  8. Ashbyは調査結果の中にMortimerという名前を見つけ、非常に強いショックを受けた。
  9. AshbyはFowlerにこの事を話し、二人はこれをRowletteに伝えるべきか悩んだ。
  10. 最終的にRowletteは自らの出生証明書上にMortimer医師の署名を見つけ、真実を知った。
  11. 3人は現在、既に引退しているMortimer医師と、彼がかつて所属していたアイダホフォールズの産婦人科協会を相手取り訴訟を起こして係争中。


一点私の方から補足ですが、「Ancestry.com」というのは、アメリカのユタ州に拠点を置く世界最大の家系調査の民間企業です。ですから、Rowletteが自分の両親が生物学的な親ではないのかも、、、と疑って調査を依頼したのかどうかは、少なくとも今回の記事を読むだけではわかりません。

 

不妊治療関連の課題


実は私、つい最近こんな記事を書いたばかりです。

 

blacknote.hatenablog.com

 

ですから、今回のTIME誌の記事はあまりにも個人的にタイムリーで驚きました。

 

おそらく、「似たような話を聞いたことがある」という方もいらっしゃるかと思います。数ヶ月前だったと思いますが、別の国でも大きな問題になり、日本でも報道がなされました。生物学的な親子関係は、血液型が明らかにマッチしなかったり(例:両親がA型もしくはO型なのに子供がB型)すれば話は別ですが、そうでない場合は簡単にはわかりません。ですから、バレていないだけで、実際にはこういうことをする(した)医師は他にもいるのかもしれません。

 

ただ、今回の記事で扱われているのは少々古い事例であり、現代では減っているとは思います。DNA検査が安価で容易に受けられる時代ですから、医師側にとっても基本的には「そんなリスクを取る理由がない」と言えるのではないでしょうか。

 

ただ、インターネットで少し検索してみればわかるわけですが、「対価は求めないから精液を提供したい」、「会えなくてもいいから自分の子供を産んでほしい」という男性は日本にもたくさんいます。「本能」とまでは言いませんが、そういった欲求を持つ男性というのは現にいるわけです。そして、そういった提供者を探し、精液の提供を受けて自ら人工授精を試みる女性もどうやら少なくないようです。私が先日読んだ記事では、「何度か提供を受けて自分で注入してみたけれどなかなか妊娠に至らないから」という理由で、提供者である40代の男性とのセックスを決断し、最終的に妊娠した20代の女性の話が載っていました。

 

個人主義が進み、例えば、自分の子供への「恋人はできた?」、「結婚はまだなの?」、「早く孫の顔が見たいな」、といった発言はある種のハラスメント、場合によっては人権侵害として扱われる時代です。「結婚はしたくないけれど子供は欲しい」という女性もいますし、「LGBTでも子供が持てる制度作りを!」なんていう動きもあります。精子バンクに卵子バンク、セルフ妊娠に代理出産、養子関係の法整備、デザイナーベビー、、、この分野には非常に多くの重要なトピックがあります。

 

「生物学的な親の同定の重要性」に関して、どう考えるかは人それぞれですし、私には私なりの考え方がありますが、それを皆さんに押し付ける気もありません。ただ、「受精」というのは生命の誕生そのものですから、人間が精子や卵子、受精卵等を人為的にコントロールするということが果たして本当に許されるべきなのか、これに関してだけは、全ての人が考えるべきテーマだと思っています。それを言いたくて、今回このような記事を書いてみました。